「ニキビ」の始まり

「ニキビ」は誰もが発症する病気

これまで、「ニキビ」は「青春のシンボル」と言われてきました。その所為か、ニキビなんて思春期だけの一過的な吹き出物に過ぎない、大人になったら自然と治ってしまうもの、そして大人は無縁のもの…というように思われている方が少なくないのかも知れません。
しかし、ニキビは思春期などの若い世代だけの一時的な症状ではありません。成人後の大人世代でも、年齢性別に関わらずニキビは発症します。そして、なによりもニキビは「尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)」という皮膚病の一種なのです。

ニキビ発症のメカニズムとプロセス

ニキビなんて、と軽く見て放っておくと、まるで月面クレーターのようなニキビ跡が残ってしまい、治すのに多くの時間と多額の費用が掛かってしまうことにもなりかねません。そうなる前にニキビを予防する、できてしまったニキビの悪化を防ぐためには、ニキビについての正しい知識を持つことが大切です。
まずは、ニキビの発症原因となるメカニズム、そして症状が悪化するプロセスを知ることで、ニキビの前兆を早期に発見して予防したり、ニキビが悪化することを防ぐことができます。

ニキビのはじまり

(1) 健康な状態です。ただし、常在菌であるニキビ菌(アクネ菌)は、この状態でも存在しています。ニキビ菌は、正常な皮膚においては必要な働きをしていますので、むやみに殺菌すればよいというものではありません。

(2) クレンジングや洗顔が適切でなく外気や化粧品の残りなどにより表皮が汚れていたり、乾燥によってバリア機能が失われた角質層のダメージ、またストレスなどから新陳代謝が滞り、角質が固く厚くなって角栓をこしらえ、毛孔を狭くしている状態です。

白ニキビ、そして黒ニキビ

(3) 毛孔が塞がると、毛包内に分泌された皮脂が毛孔に詰まって溜まり、「白ニキビ」という状態になります。「白ニキビ」は毛包の漏斗状部(毛孔)に溜まった皮脂が膨らんでいる状態です。ニキビが発症する前段階となります。この状態では、まだニキビ菌の増殖による炎症までには至っていませんが、ニキビ発症前のシグナルと言えます。

(4) 外に露出しかかった皮脂の一部が、外気に触れることで酸化して黒ずんだ状態になっています。通称「黒ニキビ」と言われています。「黒ニキビ」の状態でも、炎症を起こしているわけではありませんが、ニキビ発症直前のシグナルです。押したり掻いたりするのは、悪化を促進するだけでなく、傷口から別の細菌の感染を招き、炎症・化膿が起きやすくなります。

赤ニキビ、さらに悪化すると

(5)「赤ニキビ」は、毛孔の内部にニキビ菌が増殖したことで、免疫細胞による防御反応が働き、赤く炎症を起こした状態です。ニキビ菌は、皮脂を栄養とするため、皮脂の溜まる部分に増えます。それに対して免疫細胞は菌を囲み排除しようとします。それにより炎症が起きます。触ると固くて痛い状態です。

(6)「赤ニキビ」状態を放置しておくと炎症が進み、化膿します。炎症による膿が溜まった状態が「黄(緑)ニキビ」です。血液混じりの膿が広がって深いところに溜まったものが「紫ニキビ」と言われています。ここまで悪化が進むと自己的な処置では治りません。ニキビの炎症が終わった後には、ニキビの終末状態として痕跡が残りやすくなります。
また、「黄ニキビ」の化膿が収まった(あるいは、あまり化膿が広がらなかった)後、そのまま放置していると、ニキビ菌に対する免疫機能の結果、コラーゲンに代表される結合組織が過剰生成されてできたシコリ状の「硬結ニキビ」となります。これも治癒の難しいニキビです。

「ニキビ」ができる要因

「ニキビ」は二つの条件(下記の1.と2.)が揃った時に発症します。

1.皮脂の分泌が多くなった。

皮脂はニキビの原因菌であるニキビ菌の栄養(餌)となるため、皮脂の過剰分泌がニキビ菌の増殖につながります。皮脂分泌は、ホルモンによりコントロールされますので、ホルモンバランスが崩れると分泌量にも影響が出ます。

【成長ホルモンによる影響】


思春期には成長ホルモンによって皮脂の分泌が増します。特に、額から鼻周りの「Tゾーン」と言われているところでの皮脂分泌が増します。

【男性ホルモンによる影響】


性別に関わらず誰もが「男性ホルモン」「女性ホルモン」の両方を持ちますが、性別や年齢、種々の理由によって両者のバランスが異なります。「男性ホルモン」が増えると皮脂の分泌が増します。「男性ホルモン」は皮脂分泌を高めるだけでなく、皮膚の角化を促します。
ストレスを調整するために副腎皮質ホルモンが多く分泌されます。ストレスにより副腎で副腎皮質ホルモンのひとつであるアンドロゲン(男性ホルモン)が合成され、皮脂分泌へとつながります。

【黄体ホルモンによる影響】


女性の生理と深い関係にある「黄体ホルモン(プロゲステロン)」にも皮脂分泌の作用があります。生理前にニキビができやすいのは、「黄体ホルモン」が影響しているからです。

2.毛孔が塞がった。

毛孔は、肌の1cm四方の中に少なくとも20個はあり、全身ではおよそ500万個はあるといわれています。これほどたくさんある毛孔ですが、ニキビと関わりのある部位は、顔、胸、背中の3部位となります。これらの部位で、毛孔が塞がると毛包内に皮脂が溜まり、ニキビ菌の増殖を招きます。

【肌の汚れによる影響】


顔は、常に外気にさらされています。その分、外からの様々な影響を受けやすくなります。最近よく話題になっているPM2.5(微小粒子状物質)といった大気汚染物質や花粉、微細な塵埃などが付着しても表皮は汚れます。また、汗が乾燥した状態も汚れとして残ります。そして何よりも化粧品やクリーム類が十分にクレンジングされることなく、残ってしまった場合も汚れとなります。また、これらの汚れは相互に付着しあって表皮に汚れ層を作ってしまいます。その結果、毛孔が塞がれてしまう原因となります。

【乾燥による影響】


皮膚が乾燥すると、表皮から徐々に水分が蒸発してカサカサ状態となります。そうなると、皮膚のバリア機能が失われ、角質層の奥まで水分が失われていくため、皮膚はそれを防ぐために角質の厚みを増します。また、潤いを保とうとする働きから皮脂が多く分泌されますが、厚みを増した角質は柔らかさを失っていっそう固くなり、狭まった毛孔から排出されない皮脂は老廃化した表皮の汚れとともに角栓状態となって毛孔を塞ぎ、分泌される皮脂を溜めてしまいます。

【紫外線による影響】


紫外線は、身体に様々な影響を及ぼします。それを防御するために皮膚はフィルター機能を果たす役割を高めます。それによって、角質が厚くなったり、紫外線に反応したメラノサイトにより色素生成が高まって赤くなったり黒くなったりします。特に角質に厚みが増すと、毛孔が詰まりやすくなるため、皮脂の排出が滞ることになります。

【新陳代謝の滞りによる影響】


皮膚の一番外側にある表皮は、外側(表面)から角質層、顆粒(かりゅう)層、有棘(ゆうきょく)層、基底層の順に構成されています。そして、基底層の内側(奥)には、真皮、さらに皮下組織があります。こうした何層もある皮膚構造は、常に内側の方から順に新しい細胞が形成されることにより、外側の老廃化した角質層が剥がれ落ち、新しい角質層に代わっていきます。
しかし、ホルモンバランスの崩れや紫外線の影響などにより、新陳代謝が滞ることで表皮の角質層は古いまま取り残され、厚みを増して毛孔が塞がれ、皮脂の排出が妨げられます。

ニキビができる仕組み

ニキビ発症の原因は色々とありますが、発症メカニズムはいたってシンプルです。「皮脂の過剰分泌」+「毛孔の詰まりとニキビ菌の増殖」=「ニキビ発症」、たったこれだけです。


キレイな肌を保つ

キレイな肌は、新陳代謝(ターンオーバー)が鍵となります。


皮膚の構造

人の皮膚(肌)は0.06〜0.2mmの表皮と2.0〜2.2mmの真皮で構成され、極めて薄っぺらですが、それでも体全体で約1.6㎡も占める身体最大面積の器官です。
表皮組織は、基底層、有棘層、顆粒層、角質層(淡明層)の複層構造となっていて、真皮組織と接触しながら常に細胞分裂を繰り返して、内側から外側(表面)へと動き続けています。もっとも外側の角質層は、私たちにとっては肌の表面ですが、そこに至る過程ではタンパク質の一種であるケラチンが生成され、外からの様々な影響に対しての保護機能を有しています。また、同様に生成されたメラニンは、外からの有害な紫外線を防御する役割を果たしています。
やがて、境界としての役割を終えた角質層は細胞死を迎え、次の層に役割を渡して剥離します。こうした一連の皮膚細胞の交代活動を皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)と言います。

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