「ニキビ菌」とは

「ニキビ菌」は悪玉菌、善玉菌?

ニキビの原因菌である「ニキビ菌(アクネ菌)」ことプロピオニバクテリウム・アクネスは、嫌気性菌で空気に触れる環境では増殖しません。そのため表皮内に生息し、好脂性であることから角栓によって塞がれた毛孔の中の皮脂を好んで増殖します。
こうしたニキビ菌を善玉菌であると思われる方はほとんどいらっしゃらないかもしれません。しかし、ニキビ菌は皮膚内において常在菌として存在し、通常の数であれば身体に必要な弱酸性状態を保ち、アルカリ性環境を好む病原菌などの繁殖を抑える働きをしています。
ところが、皮脂の滞留によって、皮脂を好むニキビ菌の数が増えてしまうと、逆にニキビ菌が分泌する皮脂分解酵素リパーゼで皮脂成分のトリグリセライドが分解されて遊離脂肪酸が生成され、炎症物質として排出されます。
一方、ニキビ菌の増殖を感知した表皮細胞は免疫反応として炎症性サイトカインであるインターロイキン1αを出し、炎症を起こして排除しようとします。これがニキビ症状です。

ニキビ菌の特異な一面

ニキビ菌のもたらす影響は、せいぜいニキビの発症くらいと侮っていると、とんでも無いことになってしまうかもしれないという研究結果が発表されています。
2012年、アメリカ・カナダの病理学会機関雑誌である国際科学雑誌「Modern Pathology」に、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科・人体病理学分野の江石義信教授の研究グ ループが発表した難病の一つである「サルコイドーシス(原因不明の全身性肉芽腫疾患)」の原因細菌がニキビ菌であることが解明されたという内容のものでした。
一方、その前年の2011年、三重大学大学院医学系研究科の山中恵一講師の研究グループが、ニキビ菌を皮膚ガンの一種である悪性黒色腫に投与し、集まった白血球の働きによりガン細胞の増殖を抑える動物実験に成功したという研究成果も発表されています。
ニキビ菌に関しての良否をめぐる研究はまだ端緒についた状態とはいえ、今後さらにニキビ菌についての解明が進むことで、ガンや難病の治療法の確立が期待されます。
とはいえ、ニキビ菌が異常に多くなってしまうような状態を放置してしまうことは、ニキビの発症を含めて、健康の上でも決して好ましくはありません。ニキビ菌の増殖を抑えてコントロールすることは、その栄養分となる皮脂を毛包内に溜め込まないよう、日頃から肌ケアを正しく行うことで予防することができます。
それでもストレス過多などからホルモンバランスが崩れて皮脂分泌が亢進して、ニキビ菌を増やしてしまった(ニキビを発症してしまった)という場合は、市販薬として販売されている抗菌効果のある医薬品を用いることで、ニキビ菌を減らすことができます。

ニキビダニについて

ニキビダニ

ニキビ菌とは違う「ニキビダニ」


ニキビダニ(毛包虫とも)も、ニキビ菌に近い部位に生息することから、ニキビ菌と同じように思われるかもしれませんが、両者は全く異なる種です。ニキビダニは、ニキビ菌が菌であるのに対して、微生物(節足動物門鋏角亜門クモ綱ダニ目ケダニ亜目ニキビダニ科ニキビダニ属に属する動物)に分類されます。ニキビダニもニキビ菌と同様に人に常在寄生していて、皮脂腺の発達している顔、胸、背中に寄生密度が高く、顔に寄生するニキビダニを通称「顔ダニ」と言っています。ニキビダニは毛包上皮細胞を食料とし、主として毛包部に寄生しているため、「毛包虫」とも呼ばれています。

ニキビ菌とニキビダニの微妙な関係


皮膚には顔ダニの排泄機能がなく、毛孔の中で寿命を全うし死骸となって初めて排泄されます。それが毛孔の詰まりとなったり、それを栄養とするバクテリアなどの温床ともなりやすく、皮膚組織の免疫作用が働き炎症を起こして表皮が赤くなります。また、それ自体もニキビや湿疹の原因ともなります。
しかし、殺虫・殺菌してしまえばよい、というものでもありません。常在しているニキビダニもニキビ菌も存在することで互いに牽制しあって均衡が保たれているため、ニキビダニもニキビ菌も許容範囲数であれば、すぐに害をもたらすということはありません。

治らない炎症、もしかして犯人はニキビダニかも


特に気をつけなければいけないことは、抗菌薬などの安易な使用です。ニキビ菌に効く抗菌薬がニキビダニには全く効果がなく、両者の縄張りバランスが崩れるとニキビダニが増え過ぎてしまうということもあります。
「ニキビ」だと思って、抗菌薬を使用していてもなかなか炎症が治らないときは、ニキビダニの繁殖を疑ってみる必要があります。
ニキビダニに対して有効な市販の医薬品としては、大和製薬のニキビ治療薬「タイワクムメルシエキ」があります。「タイワクムメルシエキ」はイオウを分散させ、石灰水を添加したアルカリ性溶液であり、ニキビ菌にもニキビダニにも有効な製品です。

アクネ菌

ニキビ菌の殺菌

ニキビ菌の殺菌で注意しなければならない点は、早急に強力な殺菌効果を求めすぎないことです。殺菌効果の高い薬は、必要なニキビ菌数まで減らしてしまうだけでなく、皮膚を守る働きをする他の常在菌も殺菌してしまうことになりかねません。
そして、薬剤を塗布をするときは、いきなり皮膚全面に塗り込むのではなく、用法をしっかりと把握し、ニキビで炎症している部分のみピンポイントで適正量を使用するようにしてください。殺菌剤の多くは、皮膚への刺激性が伴うとともに、眼などに揮発成分が入った場合は粘膜が炎症を起こしたり、患部以外の柔らかな皮膚が腫れ上がったりする場合もあります。

ニキビ菌の殺菌に効果のある医薬成分


 アルコール・エタノール系
アルコール・エタノール系成分を多く含む化粧水は、殺菌効果がある反面、皮膚への刺激も強く、揮発性が高いため使用中に気化ガスが眼の粘膜にしみこんで炎症を引き起こすことがありますので注意が必要です。また、気化の過程で皮膚の水分が失われて乾燥しやすくなりますので、乾燥肌の方やお顔など乾燥しやすい皮膚への使用はお勧めできません。

 イオウ
イオウは、ミネラルの一種で副作用がほとんどなく、ニキビ菌に対して有効な殺菌能力のある成分です。また、ニキビ菌以外にも、ニキビダニにも殺菌効果が認められています。ただし、イオウ成分は、皮脂を吸収しますので、皮膚が乾燥しているときはニキビ周りをピンポイントで使用してください。
大和製薬のニキビ治療薬「タイワクムメルシエキ」「クムメル軟膏」は、イオウを主成分としている医薬品ですので、ニキビ菌の殺菌に安心してお使いいただくことができます。

 グリチルリチン酸
グリチルリチンは、甘草の根に含まれている自然成分で、抗炎症作用と抗アレルギー作用があり、人工的副腎皮質ホルモンであるステロイド剤に近い働きをする有効成分です。ただ、ステロイドほど抗炎症作用は強くなく、副作用も同様に弱いため安心して使用することができますが、それでも長期にわたっての使用は控えた方が良いでしょう。

 サリチル酸ナトリウム
サリチル酸およびサリチル酸ナトリウムは、ニキビ菌の殺菌作用に加えて、皮膚の角質を柔らかくする作用があります。ニキビ菌を滅菌するとともに角栓によって毛孔が塞がれるのを防ぐため、ニキビの炎症を抑える成分として医薬品や化粧品などに含有されています。
サリチル酸をマクロゴールという基材で溶解したものは、ニキビ痕の治療法の一つとして知られているケミカルピーリングに用いられます。また、サリチル酸の抗真菌作用は白癬菌の発育を阻止するため古くから水虫治療薬に含有されてきました。ただし、含有成分の濃度が高いと熱感や痒みが感じられるなどの過敏症状が現れるため、使用にあたっては注意が必要です。

 ホモスルファミン
ホモスルファミン(マルファニール)は、スルフォンアミド誘導体のうち、特殊な抗菌スペクトルをもつ化学療法剤です。抗菌作用があるため、ニキビ治療薬、皮膚塗布薬などに含有されています。また、その抗菌性からニキビ菌はもとより、背中などのニキビ原因菌にもなるマラセチア菌、ニキビの化膿に関わる黄色ブドウ球菌にも有効で、さらに、大腸菌、赤痢菌、サルファ剤が効かないガス壊疽菌、悪性水腫菌、破傷風菌などにも効果があるなど、ほぼ万能に近い抗菌成分であるとも言えます。ただし、体内に取り込まれた成分の排出が早いため、作用が持続するのは短くなります。そのため、体内への蓄積性は低く、副作用が少いという特徴があります。それでも、成分量が多いと稀にアレルギー反応、腎障害、血液障害、吐き気、嘔吐、頭痛などの副作用症状がみられる場合もあります。
大和製薬のニキビ治療薬イオウ・dl-カンフル含有ローションの「タイワクムメルシエキ」は、適量のホモスルファミンを含有し、通常のニキビケア品に含まれているサリチル酸では効果が薄いニキビ菌に対して有効に殺菌します。「背中ニキビ」の原因菌となるマラセチア菌やニキビの化膿原因となる黄色ブドウ球菌の殺菌にも適していて、副作用も殆どなく安心して使用できます。

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